院内感染リスクを低減しつつ治療を継続するためにオンライン診療の活用も検討可能に

第2回 オンライン診療の受診の手順と注意点

実践編:宮田俊男先生インタビュー

サマリー

・厚生労働省はホームページで電話・オンライン診療を実施している医療機関のリストを公開している
・事前にオンライン診療用のアプリのインストールが必要な場合が多い
・医師の判断で対面診療を求められることも。オンライン診療には限界があることを理解することが大切

まずはオンライン診療を実施しているか、医療機関に確認

オンライン診療を利用するには、まず受診したい医療機関がオンラインでの診療に対応しているか、確認が必要です。新型コロナウイルス感染症の感染が収束するまでの時限的措置として、2020年4月から過去に受診歴のない医療機関でもオンライン診療が受けられるようになっています1)。厚生労働省ではホームページでオンライン診療を実施する医療機関のリストを都道府県ごとにまとめて公開していますので、参考にされると良いでしょう2)。希望する医療機関に連絡し、診察の予約を取りましょう。

※ オンライン診療に対応している医療機関リスト(厚労省のHP)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00014.html
厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について(2020年5月11日アクセス)
https://www.mhlw.go.jp/content/000621727.pdf より

オンライン診療の流れについて

お手持ちのスマートフォンを利用してオンライン診療を受ける場合は、事前にオンライン診療用のアプリケーション(以下、アプリ)をインストールする必要があります。オンライン診療用のアプリを提供している会社は複数あり、受診を希望する医療機関が導入しているシステムによって必要なアプリも異なります。どのアプリをインストールすれば良いのか、受診する医療機関に確認してください。
アプリをインストールしたら、ユーザー設定を行います。画面の案内に従って患者さん自身のお名前や連絡先、保険証や支払いに必要な情報などを入力しましょう。アプリによってはユーザー設定後にアプリから診療予約を取ったり、問診票を記入したりする場合もあります。
アプリのインストールとユーザー設定が完了したら、予約日時に医療機関からスマートフォンに着信があり、オンライン診療がスタートします。診察後の支払いはクレジットカード決済や銀行振り込みで可能となります(図1)。

図1)オンライン診療の流れ (イメージ図)

図1 オンライン診療の流れ (イメージ図)

※医療機関によって診療の流れは多少異なります。受診する医療機関に確認してください。

ご高齢の患者さんにもスマートフォンをお持ちの方は多いのですが、アプリのインストールやユーザー設定が難しく、オンライン診療はハードルが高いと感じる方もおられるようです。ご自分で操作できない場合はご家族やケアマネージャーに手伝ってもらうか、どうしても難しい場合はLINEやFaceTime、Skypeなどが可能か、動画を使わず電話で可能か医療機関に相談されると良いと思います。
当院では、どうしてもアプリのダウンロードができない、あるいは保険証や支払いに必要な情報を入力することに不安を感じるという患者さんには、LINEやFaceTime、Skypeなど汎用のビデオ通話アプリを用いたオンライン診療も行っています。ただし、専用のアプリを利用されない場合や電話の場合は、保険証のコピーをファックスなどで送ったり、支払いを行うために銀行に振り込みに行ったり(PayPayや宅配による代引きを当院では可能にしていますが)、薬局にも同様の手続きを求められ、手間が増える可能性があります。

必要に応じて対面での診察を求められる場合も

今回の新型コロナウイルス感染症の拡大を鑑みた規制緩和では、ビデオ通話機能を使ったオンライン診療だけでなく、電話での受診も認められました1)。電話診療であればアプリのインストールは必要なく、予約を取る際に保険証などの情報を医療機関に伝えて支払い方法を確認すれば診療が受けられます。ただし、電話では患者さんの顔色や表情、ちょっとしたしぐさなど目で見て得られる情報がない分、詳細かつ慎重な聞き取りが必要となり診察時間が長くなりがちです。病状に変わりがなく、薬の継続的な処方を希望され、お薬手帳等で確認できる場合はまだ良いのですが、初診の患者さんや新たに気になる症状がある方は、できるだけビデオ通話での受診をお勧めします。
また、電話やオンラインでの診療では触診や聴診、血液検査などができませんので、医師が対面での診療や検査が必要と判断すれば、医療機関の受診を求められることもあります。当院でも実際に腹痛の患者さんで触診の必要性があり、来院を求めた場合もあります。その場合は、医師の指示に従うようにお願いをいたします。オンライン診療には限界があることを理解して、うまく活用することが大切だと思います。

宮田 俊男 先生 宮田 俊男 先生
 
医療法人DEN理事長、みいクリニック院長
大阪大学大学院医学系研究科招聘教授
国立がん研究センター企画戦略アドバイザー
 
早稲田大学理工学部で人工心臓に出会い、自ら患者さんに新しい医療を生み出すべく1999年、大阪大学医学部に3年次編入。2003年、大阪大学第一外科に入局。現場で新しい医療を生み出すためには制度改革が必要と痛感し、2009年、厚生労働省に入省し、多くの医療改革に関わる。大阪大学産学共創本部特任教授、京都大学産官学連携本部客員教授、国立がん研究センター政策室長、日本医療政策機構理事を歴任し、日本健康会議実行委員、日本臨床疫学学会理事も務める。今も現役の外科医でもありながら、かかりつけ医を推進するため、みいクリニック院長として地域医療を守るとともに、企業の健康経営や、生活習慣病の重症化予防、在宅医療にも取り組んでいる。また数万人がダウンロードしているセルフケアアプリ「健こんぱす」の考案者としても知られている。
 
現在の趣味は、釣りと畑と料理