関節リウマチ市民公開講座記録集
知って! 伝えて! 試して! 生活も趣味も仕事もあきらめない
やりたい! できた! をふやしませんか?
2022年6月18日 オンライン開催
株式会社QLife・ヤンセンファーマ株式会社 共催
公益社団法人 日本リウマチ友の会 後援
【第3回】「やりたいことをあきらめない」
伊藤 聡先生(新潟県立リウマチセンター 副院長)
永井 薫先生(ナゴヤガーデンクリニック看護課 師長/日本リウマチ財団 リウマチケア看護師)
小林 春樹先生(あずまリウマチ・内科クリニック リハビリテーション科 科長/理学療法士)
全3回シリーズで開催してきた関節リウマチのWebセミナー「知って! 伝えて! 試して! 生活も趣味も仕事もあきらめない やりたい!できた!をふやしませんか?」(共催:株式会社QLife、ヤンセンファーマ株式会社、後援:公益社団法人 日本リウマチ友の会)もいよいよ最終回となりました。
2022年6月18日(土)に開催された第3回「やりたいことをあきらめない」では、医師の伊藤 聡先生(新潟県立リウマチセンター 副院長)にご講演いただいた後、看護師の永井 薫先生(ナゴヤガーデンクリニック看護課 師長、日本リウマチ財団 リウマチケア看護師)、理学療法士の小林 春樹先生(あずまリウマチ・内科クリニック リハビリテーション科科長 理学療法士)とのパネルディスカッションが行われました。
講演
「やりたいことをあきらめない」
伊藤 聡先生(新潟県立リウマチセンター 副院長)
関節リウマチと向き合うには、まず、患者さんがご自身の病気を正しく理解する必要があります。血液検査の結果などを理解できるようにしておくと、ご自身の体調が把握しやすくなります。
また、治療目標に基づいた治療を行うことが大切です。関節リウマチにはTreat to Target(T2T)というガイドラインがあり、その中でまずは「臨床的寛解」を目指すとしています。
寛解の指標として有名なのはDAS28という、28個の関節について、腫れのある関節数と痛みのある関節数を数えるものです。当院の看護師による調査では、DAS28を理解している患者さんは、理解していない患者さんに比べて、疾患活動性が低く、満足度が高いという結果が出ています1)。

伊藤聡,他.リウマチ科. 2015;54(3):349-357.
DAS28のほかにも指標はいくつかあります。興味のある方は主治医の先生と相談してみてください。

関節リウマチの状態がよくても、自己判断では薬を減らさないようにしましょう。費用もかかるので、症状がよくなったら薬を減らしたいという気持ちはわかるのですが、飲み薬を減らしたら症状がまた悪くなった(再燃した)という報告もあります2)。減薬に関しては主治医の先生と相談していただきたいと思います。
寛解状態が維持できれば、やりたいことを続けることができます。ぜひ、やりたいことを全部できるような人生を目指してください。
文献
- 1)伊藤聡,他.リウマチ科. 2015;54(3):349-357.
- 2)Lillegraven S, et al. JAMA. 2021;325(17):1755-1764.
パネルディスカッション
パネリスト:伊藤 聡先生(新潟県立リウマチセンター 副院長)
永井 薫先生(ナゴヤガーデンクリニック看護課 師長/日本リウマチ財団 リウマチケア看護師)
小林 春樹先生(あずまリウマチ・内科クリニック リハビリテーション科 科長/理学療法士)
永井先生
リウマチの状態をコントロールできていれば、多くの場合、少しの工夫で仕事を続けることは可能だと思います。まずは、ご自身のリウマチの程度を知ることが大切です。また、病気のことを伝えるのが嫌でなければ、ご自身の状態を周りの人に伝えておくと必要なときに助けを求めやすくなります。関節リウマチはご自身のせいではありません。家族に状態を伝えられない場合は、可能であれば、ご家族も一緒に受診されるとよいと思います。
伊藤先生
私もリウマチの状態が悪くなければ仕事は続けられると思いますが、負担であれば辞めるのもひとつの方法だと思います。病気は上司などに伝えておき、理解していただいたほうがよいと思いますが、どこも痛みがなく、生活のレベルも低下していない方は、職場に告げなくても仕事を行うことが可能だと思います。
小林先生
運動を行うときに使う靴は、脱ぎ履きのしやすさで選ぶ方もいるかもしれませんが、かかとと足の甲の部分をベルトや靴ひもなどでしっかりと固定し、靴の中で足があまり動かないようにすることが大切です。ハイキングや登山の場合は、足首を守るためにハイカットの靴を選ぶとよいでしょう。ジョギングやランニングでは、靴底が柔らかいものや靴底の幅が広いものを選ぶと、関節への負担が減ります。水泳や水中運動の場合には、水から上がったらこまめに体を拭く、サウナに入るなど、体が冷えないように注意することが大切です。どの運動を行う場合でも、運動前に体全体のストレッチや柔軟体操を行ってください。
永井先生
痛くない程度に行ってください。ご自身の趣味を医療従事者にお伝えいただくとよいと思います。畑仕事やガーデニングでは、感染しやすい菌などもありますから、ぜひ相談してください。
小林先生
しゃがむ姿勢をとるガーデニングや畑仕事では、膝や腰になるべく負担のかからないように、必要に応じて椅子を使うとよいと思います。また、滑り止めが付いた手袋を使用すると、手の筋肉を使う力が少なくなり、関節の負担を減らすことができます。主治医やリハビリのスタッフと相談して、装具を作るのもよいでしょう。長時間同じ姿勢でいると血流が悪くなるので、30分に1回は休憩をはさんで、体を動かすようにしてください。
永井先生
旅行の際には、お薬手帳を持っていくことをお勧めします。医療機関で定期的に注射をされている方は、タイミングをずらせる可能性もあるので、主治医と相談してください。
小林先生
旅行中に無理をしてあちこち痛くなったというケースがありますので、余裕のあるスケジュールを立ててほしいと思います。靴は普段から履き慣れているものを選んでください。かばんはキャリーバッグが最もお勧めです。リュックでも手首にかかる負担は減らすことができると思います。列車は、なるべく歩かなくてよいように、トイレや出入口に近い座席をお勧めします。
伊藤先生
海外旅行の場合は時差があるので、薬の服用時間について主治医の先生と相談してください。飛行機に乗る場合、注射器を持っていく方や人工関節など体に金属が入っている方は、主治医から証明書を書いてもらうと、保安検査場などでの手続きがスムーズに進みます。
永井先生
以前と比べると妊娠も現実的になっていると思いますが、薬によっては影響が出ることがあるので、妊娠を希望されるのでしたら必ず医療従事者に相談をしてください。
伊藤先生
現在、日本リウマチ学会と日本産科婦人科学会で、妊娠する前にリウマチ医と産科の先生に相談し、まずは計画を立てる「プレコンセプションケア(Preconception care)」という取り組みを進めています。オンラインでプレコンセプションケアを実施している施設もあります。保険適用外ですが、こうしたものを利用するとよいと思います。
小林先生
出産後は骨盤付近の靭帯が緩み、身体を支える力が低下します。そのような状態で抱っこや授乳を行うと、特に関節リウマチ患者さんでは体への負担が大きくなります。家族のサポートをしっかり受けられるように、ご家族で計画を立てていただくのが大切です。
小林先生
自分自身の体の状態を理解して、何が無理なのかを知っておくことが必要です。どのようなときに痛みが出やすいのか(時間帯、天候や気候、運動の影響など)をこまめに記録しておくことをお勧めします。少しでも痛みがある場合はそのままにせず、医療従事者に相談してください。
永井先生
家事も手に負担がかかります。カット野菜や電子レンジなどの便利グッズを活用して、無理をしない工夫をしてください。
伊藤先生
目標を立てるとやり遂げようと頑張ってしまいがちですが、痛みが出たら体が限界だというサインですので、その先は無理をしないことが大切です。
小林先生
運動は人によって合う、合わないがあります。情報に左右され過ぎず、自分の体と相談してください。主治医やリハビリのスタッフに相談するのもよいと思います。
伊藤先生
情報源を確認することが大切です。公的な組織、日本リウマチ友の会、日本リウマチ学会、トモノワ®など、正しい情報を発信している組織から情報を入手してください。
Q&Aセッション
永井先生
リウマチの患者さんは、朝のこわばりで思うように手足が動かないことがあります。午前中など起きがけに「何かできることない?」と声を掛けていただけるとよいと思います。
小林先生
どこにサポーターを巻くべきかご自身で判断を行うのは難しいため、医療機関で主治医やリハビリのスタッフと相談して、症状に適した装具やサポーターを選択するとよいと思います。
伊藤先生
栄養士がいる場合は栄養士に、いない場合は主治医や看護師に相談してください。
小林先生
まずは医療機関で相談いただくとよいと思います。靴屋には足の形をみながら靴の調整をしてくれるシューフィッターがいる場合があるので、近隣の靴屋を調べてみてください。医療機関で靴型装具を作るのもひとつの方法です。
永井先生
入っていただいて問題ありません。
小林先生
親指の先の部分が反るZ型変形では、親指の関節を固定して、親指で押しやすくするリングタイプの装具があります。手首を回すときに痛みがでるようでしたら、手首に巻くタイプの装具やサポーターを使用いただければと思います。
伊藤先生
低気圧は関節痛と関係しているといわれています。影響のある方は、できれば活動を制限されることをおすすめします。
小林先生
リハビリのスタッフと相談して、膝の状態や足首の動きをみてもらってください。正座は関節に大きな負担をかける動作のため、無理をして行うのはお勧めできません。
伊藤先生
手術をして人工関節に置きかえることも選択肢のひとつになると思います。医師に相談してみてください。
小林先生
痛みが出るか出ないかで判断してみてください。運動中に痛ければ、合っていない証拠です。運動後に2~3日の筋肉痛が出るぐらいであれば、効果が出ていると思いますが、それが3~4日経っても痛みが引かない場合は、やり過ぎ、負担がかかっていると考えてください。
永井先生
リウマチの疾患活動性も関係している場合があるので、ご自身のリウマチの程度を主治医に聞いて、運動を考えるのがよいと思います。
伊藤先生
水中ウォーキングは正しく行えば、膝に負担がかからないのでよいと思います。正しくできているか見てくれる人がいることは大切です。
永井先生
普段からメモにまとめておいて、診察の際に確認していただくとよいと思います。医師に伝えにくいと思ったら、看護師に相談していただいても構いません。
永井先生
定期的に体重や身長や握力などを測ると、体の変化を感じることができると思います。
伊藤先生
無理をしない程度の適度な運動が大切です。
小林先生
リウマチの患者さんには呼吸機能が落ちてしまう方もいるので、有酸素運動で全身を動かして、循環をよくして呼吸機能を上げて、筋肉を柔らかくしてあげることが大切だと思います。体幹を使って深呼吸ができるようになることも重要です。
伊藤先生
診察が必要になるので、手を専門とする整形外科で診ていただくとよいと思います。
伊藤先生
年齢が上がると、加齢による変形性膝関節症について考える必要がでてきます。また、薬の量を減らしたり、薬の種類を変更したりする場合があるので、主治医の先生と相談してください。
伊藤先生
関節に負担がなければ、ぜひ続けてください。
小林先生
動かしにくくなった、音が鳴るようになったなど、いつもと違う違和感が出てきたときは早めに相談してください。
伊藤先生
定期的に関節のレントゲンを撮ることが大事です。
小林先生
やりたいことをあきらめないためには、自分自身の体のことをよく知っておくことが大切です。気軽に、医療従事者へご相談ください。
永井先生
私たち看護師は、患者さんがやりたいことをできるようにサポートいたします。お困りのことがあればぜひご相談ください。
伊藤先生
多職種でリウマチに立ち向かって治療に当たるトータルマネジメントが非常に大切です。トータルマネジメントの実践によって、患者さんはやりたいことをできるようになると思います。