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バイオ医薬品の基礎知識

2023/02/15?Knowledge

タイトル
バイオ医薬品の基礎知識
検証状況
Work In Progress
URL 名
RA-SME5-1
概要
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内容
  • バイオ医薬品とはバイオテクノロジーを応用して製造されるたんぱく質を有効成分とする医薬品
  • 標的とした細胞の働きを選択的に抑え、それ以外の部分への影響が少ない
  • がんや関節リウマチなどの自己免疫疾患、糖尿病、難治性疾患への治療効果が期待できる

「バイオ医薬品」とは何ですか?

「バイオ」と聞くと、一般にはそれほど馴染みのない言葉ですので、患者さんによっては「危ないものなのではないか、得体のしれないものではないか」と不安や心配になる方もいらっしゃると思います。ここでは、患者さんに正しく知っていただくために、「バイオ医薬品」というものはどういうものなのかをご説明します。
バイオ医薬品とは、バイオテクノロジー*1を応用して製造される医薬品で、細胞を培養する技術などにより製造した、たんぱく質を有効成分とする医薬品のことです(図1)。医療現場では、バイオ医薬品を「生物学的製剤」などと呼ぶこともあります(本記事では「バイオ医薬品」と呼びます)。

*1 バイオテクノロジー:「バイオロジー(生物学)」と「テクノロジー(科学技術)」を合わせた言葉で、生物の組織や細胞、遺伝子を活用して有用な生物体を生産する技術

(図1)
バイオ医薬品とは?

バイオ医薬品=バイオテクノロジー応用医薬品

石井伊都子先生 ご監修

一般的な医薬品が薬品を化学反応させて作る化学合成医薬品であるのに対して、バイオ医薬品は細胞や微生物など生物の力を利用して作られます(図2)。

(図2)
バイオ医薬品と一般的な医薬品の違い

【製造方法】一般的な医薬品:薬品を化学反応させて作る バイオ医薬品:微生物や細胞など生物の力を利用して作る

石井伊都子先生 ご監修

生物の力を利用している理由は、たんぱく質の構造にあります。たんぱく質は、非常に複雑な形をしています。化学合成では限界があり、現在のところ、薬品を化学反応させてたんぱく質を作るのは困難です。一方、動物や微生物などの生物を構成する「細胞」にはたんぱく質を作る力が備わっていて、多数のアミノ酸をつなげることができます。この力を利用して、たんぱく質を作り出していくのです。

バイオ医薬品がもたらすメリット

バイオ医薬品は、標的となる細胞やたんぱく質に速やかに結合するようにデザインされているため、標的とした細胞の働きだけを選択的に抑え、それ以外の細胞への影響を少なくすることができます。また、がんや関節リウマチなどの自己免疫疾患、糖尿病、難治性疾患への治療効果が期待できるといったメリットもあります。
世界初のバイオ医薬品は糖尿病の治療薬ヒト・インスリンで、日本では1985年から使用が始まりました。今では複数のバイオ医薬品が開発され、がんや貧血、乾癬、炎症性腸疾患など、さまざまな疾患の治療に使われています。
関節リウマチの治療にバイオ医薬品が導入されたのは2003年からです1)。一昔前は身近な難病といわれていた関節リウマチは、薬物治療の劇的な進歩によって、寛解(関節リウマチの症状がほとんどない状態)を目標とした治療が可能となってきています。
このようにバイオ医薬品の歴史は浅くはなく、すでに医療において豊富な治療実績があるのです。

「バイオ医薬品」治療への不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、バイオ医薬品への理解を深め、適切に使用することで、生き生きと自分らしい毎日を過ごしていただけると考えています。

1)竹内勤. 日本内科学会雑誌 98(4):883-889,2009.

石井伊都子先生

石井 伊都子 先生

薬剤師
千葉大学医学部附属病院 薬剤部 教授(部長)。1988年に千葉大学薬学部卒業後、同大学薬学部生化学研究室の教務職員、助手を経て、1999年に米国National Institute of Healthの博士研究員に。2001年千葉大学大学院薬学研究院、2003年病院薬学研究室の准教授に就任。2012年9月より千葉大学医学部附属病院薬剤部長。薬学博士。
(2022年10月現在)