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バイオ医薬品の特徴と取り扱い

2023/02/15?Knowledge

タイトル
バイオ医薬品の特徴と取り扱い
検証状況
Work In Progress
URL 名
RA-SME5-2
概要
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内容
  • 注射剤が多い
  • 分子量が大きく構造も複雑
  • 適切な管理が必要なため、決められた方法で保管しよう

バイオ医薬品に注射剤が多いのはなぜですか?

一般的な医薬品には、錠剤やカプセル、粉薬、内服液、吸入剤、貼付剤、注射剤などさまざまなタイプの薬がありますが、バイオ医薬品は注射剤です。なぜかというと、たんぱく質でできているバイオ医薬品は、口から飲むと消化の作用を受けて分解されてしまうからです。みなさんが日頃から食べている肉類や魚類のたんぱく質を思い浮かべていただければ、たんぱく質が体内で消化・分解されるイメージがしやすいかもしれません。
噴霧剤や吸入剤のバイオ医薬品もありますがごくわずかで、現時点では飲み薬はありません。

もう1つの大きな違いは、「分子の大きさ(分子量)」です。
分子とは、物質の性質を表す最小の粒子で、この分子の大きさで比べると、一般的な医薬品(化学合成医薬品)と比べて、バイオ医薬品の分子は非常に大きなものになります。例えば、解熱鎮痛抗炎症薬の有効成分アスピリン(成分名)の分子量が約180なのに対して、糖尿病治療に用いられるバイオ医薬品のインスリンは約6,000です。しかし、インスリンはバイオ医薬品としては分子量が小さく、なかには分子量が約15万という非常に分子が大きいバイオ医薬品もあります(図1)。

(図1)
バイオ医薬品の特徴

図1 バイオ医薬品の特徴

厚生労働省.中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第112回)参考資料https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000105835.html(2022年10月アクセス)より改変

バイオ医薬品は細胞など生物の力を利用して人工的に作り出したたんぱく質を有効成分にした薬であり、そのたんぱく質は複数のアミノ酸がつながってできています。アミノ酸1個の分子量は平均するとおよそ100とされていて、アスピリンと同程度ですが、バイオ医薬品は分子量100のアミノ酸が100個、1,000個とつながっているわけですから、非常に大きくて、かつ複雑な構造を持つ医薬品であることがおわかりいただけるかと思います。

バイオ医薬品を冷蔵庫で保管するわけは?

バイオ医薬品には、従来の医薬品では制御できない標的細胞に作用して、効果を発揮できるメリットがあります。しかし、分子量が大きく構造が複雑なバイオ医薬品は、分子量の小さな一般的な医薬品に比べて、製造工程のわずかな変化で品質が変わってしまうおそれがあります。医師から在宅自己注射の指導を受けた場合、患者さん自身が注射剤を自宅で管理する必要がありますが、温度や光はバイオ医薬品の安定性に影響を与えます。保管方法が「ケースに入れたまま、冷蔵庫で」「冷凍は避ける」などの条件となっているのはそのためです。条件を守らずに保管した場合、たんぱく質が変性したり固まったりして、医薬品としての効果がなくなるだけでなく、安全に使用できなくなる可能性がありますので、冷蔵庫の冷凍室で凍らせたり、落として割ってしまうことのないよう丁寧に扱いましょう。
患者さんから「注射器をケースから出して冷蔵庫に入れても良いですか」と相談されることがありますが、薬剤が光に当たることを避けるためにも、必ずケースに入れた状態での保管をお願いします。
バイオ医薬品に限らず、医薬品を使用する際の大原則は、「決められたことを守る」ことです。特に、在宅自己注射の場合は、患者さんご自身やご家族による薬剤管理が重要となります。自然災害や事故による停電で冷蔵庫が使えなくなるなど、不測の事態が起こる可能性もありますので、その場合は自己判断で使用せず、必ず薬剤師または医師・看護師に相談してください。

石井伊都子先生

石井 伊都子 先生

薬剤師
千葉大学医学部附属病院 薬剤部 教授(部長)。1988年に千葉大学薬学部卒業後、同大学薬学部生化学研究室の教務職員、助手を経て、1999年に米国National Institute of Healthの博士研究員に。2001年千葉大学大学院薬学研究院、2003年病院薬学研究室の准教授に就任。2012年9月より千葉大学医学部附属病院薬剤部長。薬学博士。
(2022年10月現在)