- SDMを実践することで、T2T(ティーツーティー)に基づく最適な治療が行える。そのためには患者さん自身も病気の知識を身につけることが大切
- 治療目標は患者さん一人ひとりで異なるため、自分に合った治療方法について医療従事者と話し合おう
- 仕事・学校、趣味、出産の希望なども医療従事者に伝えよう
SDMを実践することでT2Tに基づく最適な治療が行える
関節リウマチ治療においては現在、T2T(Treat to Target:目標達成に向けた治療)とよばれる、世界的に標準化された関節リウマチ治療の考え方を示した概念が提唱されています。T2Tは、明確な治療目標を設定し、その目標に向かって治療してゆくことを柱としており、そのT2Tには、「リウマチ医は、治療目標およびそれに達するまでの治療方針を患者とともに設定する必要がある」と書かれています1)。
わが国でも、日本リウマチ学会が治療目標や治療原則を公表しており2)、その治療原則では、関節リウマチの治療方針において患者さんと医師との「協働的意思決定」の重要性を強調しています。
「協働的意思決定」(Shared decision making: SDM)とは、患者さんと医療従事者が治療のゴールや好み、責任を話し合って適切な治療法を見つけ出す過程のことをいいます。そのためには、患者さんも病気の知識を身につけることが大切です。SDMを実践することで、治療目標が明確になりT2Tに基づく最適な治療が行えるようになります。
日本の関節リウマチ(RA)の診療ガイドラインで示されている治療目標と治療原則

日本リウマチ学会. 関節リウマチ診療ガイドライン2024改訂:pp16, 診断と治療社; 2024.
治療目標について話し合う
治療に対する希望や目標は、患者さんによって異なります。例えば海外の調査では、患者さんの治療の一番の目的は、体の機能の維持、全般的な症状の改善、痛みの改善、動ける体でいたい、薬の副作用の心配を少なくしたい、など様々でした3)。このように患者さんによって目的は異なりますが、最近は治療法の進歩とともに、患者さんの希望に沿った治療を選ぶことも可能になってきています。ぜひ、医療従事者に治療のご希望や現在の状況などを伝えて話し合い、ご自分に合った治療目標を見つけてください。

仕事・学校、趣味、出産の希望などを伝える
治療目標や治療方法は、症状だけでなく、患者さんが現在置かれている状況や将来の希望によっても変わります。例えば、お仕事や学校の都合、遠方で頻回の通院が難しい方、趣味を再開したい方もいらっしゃるでしょう。医療従事者は、一人ひとりの症状、患者さんの希望やライフスタイルに合う治療を一緒に考えたいと思っていますから、何でもお気軽にご相談ください。
妊娠・出産を考えている方もおられると思いますが、関節リウマチをコントロールすることで妊娠・出産は可能な場合もあります4)。また妊娠・出産、子育てに関し、心配なことやわからないことがあれば、いつでもお気軽に医療従事者にご相談ください。関節リウマチだからといってあきらめずに、妊娠・出産のご希望をお話しください。
参考資料
1) Smolen JS, et al. Ann Rheum Dis. 75:3-15; 2016.
2) 日本リウマチ学会. 関節リウマチ診療ガイドライン2024改訂:pp16, 診断と治療社; 2024.
3) Hulen E, et al. Musculoskeletal Care. 15:295-303; 2017.
4) 宮坂信之. ウルトラ図解関節リウマチ:pp104-105, 法研; 2019.

永井 薫 先生
看護師名古屋大学医学部附属病院腎臓内科/小早川整形リウマチクリニック。名古屋市立中央看護専門学校卒業。名古屋掖済会病院、名古屋大学医学部附属病院、ナゴヤガーデンクリニック Chief Operating Nurseを経て、現職。日本リウマチ財団リウマチケア看護師、日本リウマチ学会認定ソノグラファー、骨粗鬆症学会認定骨粗鬆症マネージャー。