- 日常生活のシーンに合った装具を活用
- 手術後も装具により患部を固定することがある
- ご自身に合う装具を正しく使用することが、日常生活をより豊かに送ることにつながる
日常生活のさまざまな場面で装具を活用できる
日常生活において、実際にどのようなシーンで、どのような装具を使用することが望ましいのでしょうか。場面ごとの実例をご紹介します。
料理をするとき
料理の過程では、包丁で切る、フライパン・鍋を持つといった動作に苦労される方が多いと思います。どちらも手関節に負担がかかりやすい動作ですので、手関節を保護する装具の使用が勧められます。
手への負担を軽減するために、びんのふたを開けるオープナーや電子レンジ用の蒸し器などの便利グッズも活用するとよいでしょう。100円ショップなどで手軽に購入できるものもあります。電子レンジ用の蒸し器などを活用すると、野菜を加熱し柔らかくしてから切ることや、フライパンや鍋を使った調理時間を短くすることができます。
写真 手関節用の軟性装具

掃除や洗濯など家事をするとき
掃除では、ぞうきんがけやスポンジ・ブラシなどで汚れを落とす動作が手指の変形を助長することがあります。そのため、手指の変形を矯正するための装具やサポーターの使用が勧められます。指が倒れないよう装具で支えることで力が入りやすくなり、指を機能的に使うことができるようになります。
洗濯では、洗濯ばさみをつまむ動作に苦労することが多いでしょう。指でつまむためには、筋力に加え関節の安定性も重要です。そのため、指の関節を固定するためのリングタイプの装具が活躍します。
写真 指の関節を固定するリングタイプの装具

入浴のとき
入浴や水仕事など水を使うときは、濡れても問題ないシリコン製のサポーターを使うとよいでしょう。使い捨てできるテーピングで代用するのも一案です。
散歩をするとき
外出や運動をするときは、足の負担を軽減するためのインソール(足底挿板)を使用しましょう。痛みをやわらげることに加え、足や足指の動きを整えることで歩くこと自体が楽になります。
足指の変形が進み、インソールだけでは靴に当たるなどして痛みがとれない場合は、変形している部分にかかる圧力を弱められる靴型装具が勧められます。
写真 インソール(足底挿板)

手術後も一定期間は装具による固定が必要
関節リウマチの治療では、薬物療法などで症状が改善しない場合に、病状のコントロールや生活の質(QOL)向上を目指して手術を行うことがあります1)。
手術後は、組織の修復のため一定期間は患部を固定することが必要です2)。医師の説明に従い装具を使用しましょう。組織の修復にともない、簡易な装具に切り替えたり、装具を外したりしますが、患者さんご自身の判断で着脱しないようにしましょう。

一人ひとりの患者さんに合う装具を上手に活用することでより豊かな日常生活を
適切な装具を使用することは、日常生活を楽にすることにつながります。実際に、道具の操作がしやすくなったり、痛みがやわらいだりすることで、「料理などの家事が楽になった」とおっしゃる患者さんも多くいます。また、インソールを使うことで「歩いても疲れにくくなった」「ハイキングや登山などの趣味が楽しめるようになった」という方もいます。
装具療法により痛みや動きにくさが改善されて、患者さんの日常生活がより良くなること、我慢していたことができるようになることが、最も喜ばしいことといえるでしょう。ご自身に合う装具を上手に活用できるよう、普段から患者さんがご自身の身体と向き合い、医師やリハビリテーションのスタッフと相談し合える関係を築いていくことが大切と考えています。
1)神崎初美 他(編). 最新知識と事例がいっぱい リウマチケア入門 -リウマチ治療はここまで変わった!, メディカ出版, 2017
2)渡辺英夫. リハビリテーション医学. 1991; 28(6):449-452.

小林 春樹 先生
理学療法士あずまリウマチ・内科クリニック リハビリテーション科 科長
2008年から武蔵嵐山病院に入職。主に脳血管障害患者に対する運動療法や退院支援といったリハビリテーションを行う。
2019年より現在のあずまリウマチ・内科クリニックに勤務。
日本リウマチ財団登録理学療法士、日本骨粗鬆症学会会員、日本ボバース研究会会員