メインコンテンツへスキップ

はっきりとした目標をもったほうがよい?

2023/02/15?Knowledge

タイトル
はっきりとした目標をもったほうがよい?
検証状況
Validated
URL 名
RA-doctor1-3
概要
Use this field for a short summary of the contents of the article. This will show in Knowledge Search results if there is not a snippet of the article to include showing words or phrases in the article matching your Search terms.
Contact

内容

はっきりとした目標をもったほうがよい?

患者さんが、SDM(shared decision making:共有意思決定)を通して主治医と協力しながら行う関節リウマチの治療は寛解または低疾患活動性が目標となります。このようなはっきりとした目標をもってする治療は、T2Tと呼ばれています1)

KEYWORD T2T(Treat to Target)

はっきりとした目標をもちながら治療を進めていく、「目標達成に向けた治療」のこと。

糖尿病、高血圧症、高コレステロール血症のような生活習慣病では一般的な治療のやり方で、心筋梗塞などの合併症を防ぐという目標に向けて血糖値、血圧、コレステロールを下げる治療(T2T)をします。一方、関節リウマチ治療のT2Tでは治癒そのものを目標にすることはできませんので、治療を続けながら関節リウマチとうまく付き合っていくことが大切です。そこで、これから長い間、患者さんの生活の質(QOL)を良い状態に保つことが、最も大切な目標と考えられています1)

T2Tの基本的な考え方

  1. 関節リウマチの治療は、患者とリウマチ医が共に決めるべきです
  2. 最も重要な治療ゴールは、長期にわたって生活の質(QOL)を良い状態に保つことです
    これは、次の事によって達成できます
    • 痛み、炎症、こわばり、疲労のような症状をコントロールする
    • 関節や骨に対する損傷を起こさない
    • 身体機能を正常に戻し、再度、社会活動に参加出来るようにする
  3. 治療ゴールを達成するために最も重要な方法は、関節の炎症を止めることです
  4. 明確な目標に向けて疾患活動性をコントロールする治療は、関節リウマチに最も良い結果をもたらします。それは、疾患活動性をチェックし、目標が達成されない場合に治療を見直すことによって可能となります

Smolen JS, et al. Ann Rheum Dis. 2010. 69:631-637 日本語訳 T2T-Japan編 竹内 勤 治療学44:1081, 2010より改変

目標を達成するために、関節リウマチの症状(痛み、炎症、こわばり、疲労など)をコントロールし、関節や骨の破壊を防ぎ、無理なく快適な日々を送ることができるよう、体の状態を整える治療をします。そのためには、まず関節の炎症を止める治療を受けることが大切です。

1)竹内勤ほか:日本内科学会雑誌.2014;103(9):2321

T2Tではどんな目標が選べるの?

関節リウマチのT2Tでは、治療の目的は寛解または低疾患活動性です。ですが、患者さん御本人がもっと具体的な目標を持つことも大切です。例えば、痛みをとりたい、楽に歩きたい、もう一度テニスやゴルフがしたい、家族と旅行に行きたいなど、考えられる目標はいくつもありますね。それもあなたが主治医と話し合って決めることが大切です。患者さんそれぞれに症状の違いがあるほか、関節リウマチ以外の持病がある場合や、仕事・家庭の事情、どれくらいの運動能力を取り戻したいかなども違います。何を目標にして治療を受けるか、目標達成のためにどのような治療を受けるかは、SDMの考え方に基づいて主治医とよく話し合って決めましょう。

T2Tを始めると、定期的な検査や、身体所見で、関節リウマチの状態を確認します。もし、今の治療を続けてもT2Tの目標達成が難しい時は、治療を見直します。例えば、今の薬の量を増やしたり、別の治療に変えたりするなど、いろいろなやり方があります。また、目標を達成できた時には、これから長く、良い状態を保てるように治療を続けます。治療の変更や継続について決める時も、主治医とよく話し合いましょう。

田中良哉先生

田中 良哉 先生

産業医科大学 医学部 第1内科学講座 教授
(2022年10月現在)